梅雨も明け、セミの鳴き声とともに、夏本番を迎えましたね。
猛暑、そして暖冬。レジ袋も有料化になり、環境問題についても日々議論されていますが、小国和紙で生産されている和紙の中にも、地球温暖化の影響を受けている工程があります。
無形文化財にも登録されている“小国紙”は、その生産工程が特徴として登録され、この工程に必要不可欠なものが“雪”です。
しかし、近年の暖冬の影響でこの工程ができず、300年以上の歴史を持つ小国紙の生産が難しくなってきています。
雪国ならではの伝統製法
小国和紙では、和紙の原料である「コウゾ」を自家栽培し、翌年の和紙作りに活かしています。
このコウゾを毎年秋頃収穫した後、皮引き、煮るなどの工程を経てから雪晒しという工程を行います。
2月~3月の良く晴れた日に、雪上にコウゾを並べていく雪晒し。
コウゾを天日にあてると、紫外線がコウゾの色素を破壊し、白く変化していきます。
また、雪の上に並べることで、乾燥することなく水分が与えられ、寒さで凍って細胞壁が破壊されます。
細胞壁が破壊されると、色素排出を促し、雪が溶けるときに発生する水蒸気や、雪による日光の反射がより晒しを効果的にしていると考えられています。
現在は、漉いた和紙を乾燥機もあり、冬でも和紙を乾かすことができますが、昔は冬季間に和紙を乾かすことができなかったため、漉いた紙はすぐに乾燥させず、春の温かい日差しのころまで雪に埋める「カングレ」という方法で保存していました。
雪の中は、外気を遮断し一定の温度で腐らず凍らず保存することができるので、埋もれすぎないように管理しながら春の雪解けを待ちます。
小国の春は、まだまだ雪が残る景色です。
あたたかい日差しの中、冬に埋めた和紙を掘り起こし、天日干しで乾燥させていきます。
雪上で天日干しをすることで、雪に反射した紫外線も当たるので、より白い和紙に変わっていきます。
しかし、近年は地球温暖化の影響で年々積雪が減っており、この作業がやりづらくなってきています。
知恵を活かした生産方法
小国紙は冬季の家内制手工業として受け継がれてきたもので、出稼ぎにいく男手抜きの年配者、女性、子どもが生産活動を行ってきた例も多いようです。
他との行き来ができなくなるほどの豪雪地帯で、どうにかして紙を生産するために、各家庭の中で一連の作業が行われていました。
年配者がコウゾの皮引き、子どもが紙たたき、そして女性が紙を漉く。
家族の絆によって小国紙は現在まで受け継がれてきました。
300年以上を越えて今もなお私たちが受け継いでいけるのは、先人たちの知恵によって生み出された製法があってこそ。
とても偶然の発見とは思えないほど、理にかなっている製法で、先人たちの知恵の深さに驚かされます。
年々貴重になっていく“雪晒し”
小国和紙生産組合で生産している和紙は、雪晒しを行っているコウゾを使用しているもの、使用していないものもあります。
雪晒しのコウゾを使用した和紙は“雪晒し”という名前で販売しております。
毎年雪晒しを行い生産していましたが、残念ながら今年は暖冬の影響で、雪晒しを行うことがほとんどできませんでした。
今年は、昨年雪晒しし、その後冷凍保存しているコウゾを少しずつ使いながら“雪晒し”を生産しています。
これから雪のない冬が当たり前になってくると、この“雪晒し”はいつか生産ができなくなってしまうかもしれません。
自然がもたらす雨や雪は、時には猛威を振るいますが、時には恵であることも確かです。
今年も無事に雪晒しができることを願いながら、日々和紙生産の行っております。
現在、オンラインショップで”雪晒し”の販売は行っておりません。
直接工房へお越しいただくか、お電話にてご連絡ください。
Comments