原材料から自社栽培
小国紙ができるまで
国産コウゾが減少する中、小国和紙生産組合ではコウゾの栽培から行なっています。コウゾの他、紙漉きの"ネリ"として欠かせないトロロアオイも栽培。コウゾ栽培から、1枚の小国紙ができるまでをご紹介します。
コウゾができるまで
コウゾの栽培
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春に小さな芽を出すと、梅雨時期から夏の蒸し暑い時期に急成長し、9月には3〜4mの高さまで伸びます。
コウゾの収穫
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気温が下がると背丈が伸びるのは落ち着きますが、幹に肉付いてきて皮が厚くなります。葉が落ちてくる頃、楮に傷をつけないよう、カマやノコギリを使い収穫を行います。
来年に向けた畑の準備
収穫後は、加工しやすいように長さを切り揃えます。
畑はまた来年に向けて畑を整備。コウゾは桑科の落葉低木で株で冬を越します。
小国紙の作業工程
皮引き
和紙はコウゾの皮だけを使っています。
蒸したコウゾを冷めないうちに皮を剥き、包丁で表皮を削り取る「皮引き」。
コウゾ1枚1枚丁寧に、芽の跡やキズも取りながら行う作業は、とても時間がかかりますが、丁寧に行うことでチリの入らない綺麗な和紙になります。
皮以外の部分はどうしているの?
和紙の原料となるのは、コウゾの”皮”の部分だけ。皮を剥いて残った芯棒は薪や畑の支柱に活用し、無駄なく使用しています。
雪晒し
皮引きを終えた皮を冬のよく晴れた日に雪の上にならべ、天日にあてることで、紫外線がコウゾの色素を破壊し、白く変化します。
雪の上に並べることで雪が溶ける時に発生する水蒸気や、雪による日光の反射がより晒しを効果的にしていると考えられます。
Before After
チリより
一晩水に冷やかし生の状態にしたコウゾを、ソーダ灰あるいは木灰液(木灰を水に溶いた上水)を釜に入れ沸騰させて4時間ほど軽く手でちぎれるくらい柔らかく煮ます。
煮た後のコウゾを水の中で広げながらチリ、スジ、キズなどを取り除く「チリより」を行います。この作業をていねいにしないと、綺麗な紙に仕上がりません。
紙叩き
コウゾの皮を繊維状にほぐしていくのが叩解の作業です。機械を使用し叩解することもありますが、小国紙は昔ながらに”つづ(槌)”という棒でコウゾの皮を叩きます。昔、この作業は子供がやっていたといいますが大変 手間のかかる作業です。叩解して繊維状になった状態を紙素(かみそ)といいます。
紙漉き
いよいよ紙漉きです。漉舟(すきぶね)と呼ぶ水槽に水をはり、紙素を入れ混ぜ合わせます。さらに トロロアオイ(ネリ)を入れてかき回し水と紙素を均一に混ぜ合わせ紙を漉きます。桁(けた)という木の枠に簀(す)という竹ひごを糸で編んだ物をはさみ、漉舟の水をくみ平らな紙になるように縦横に桁をゆすり紙を漉きます。漉いた紙は紙床(しと)という山に積み重ねます。
トロロアオイって何?
おくらに似た植物で根を叩くと粘り気のある樹液が出てきます。この樹液を”ネリ”と言います。これを布袋でろ過したものを、紙漉きの時、漉舟(紙を漉くおけ)にいれて使います。ネリの役目は主に次の3つです。
① 漉舟の中で繊維をかき回したときの沈殿をふせぎ、均一に分散させる。
② 紙を漉く際、簀の目から水が抜けるのをゆっくりにし、水を縦や横に漉き流すゆとりができ
るため紙の厚みの調整ができる。
③ ネリは漉舟の中では粘っていても、紙床に重ね時間が経つと粘り気が消え水のようになるの
で、圧搾のあと紙同士がくっつきあわず一枚一枚はがせるようになります。
これは熱や雑菌により粘り気が水気に変化するトロロアオイの性質を利用したものです。冷たくて清潔な水を使わないと長持ちさせることができません。しかも粘度は毎日変わるので紙を漉く人はその日のネリの具合をみて使う量を変えなくてはいけません。
オクラに似た花を咲かせる
ことから、花オクラとも
呼ばれています。
かんぐれ
通常は油圧ジャッキを使い水をしぼりますが、小国紙は絞らずに重ねた状態のまま雪に埋めて、春の暖かい陽射しの頃まで低温保存。
雪の中は外気を遮断し一定の温度で腐らず凍らず保存してくれます。この伝統製法を「カングレ」と言います。
天日干し
春になると、板に並べ雪上で天日し。紙に紫外線が当たると白くなるため、紫外線の強い春により多くの紫外線が当たるように雪からの反射を利用しています。乾いたら、長い長い作業工程を経て、小国紙の完成です。
このように、小国紙は自然や移り変わる四季を利用し、伝統製法で生産しています。